リベラルアーツの扉:海外教養書を読む

田楽心&青野浩による読書記録

パヴリーナ・R・チャーネバ 著『ジョブ・ギャランティの論拠 ――雇用保証はいかにして環境とコミュニティを再生し、つらい働き方を終わらせ、経済格差の是正を実現するのか』(2020年)/100点

紹介(評者・田楽心 Den Gakushin)

 ジョブ・ギャランティ・プログラム(就業保証政策)とは、働きたいと望む「すべての人」を対象として、政府の支出と自治体・NPO労働組合などによる運営を通じて、まともに暮らせる賃金と福利厚生で職と仕事を提供する制度のことだ。本書『ジョブ・ギャランティの論拠』は、ジョブ・ギャランティ・プログラム(以下「ジョブ・ギャランティ」またはJGPと呼ぶ)が人道的にも経済政策的にもきわめて優れた制度であること、また現在バーニー・サンダースをはじめとするアメリカの進歩的左派が推進する「グリーン・ニューディール」と一体となって進めるべき政策であることを、包括的に論じたものだ。

 本書によると、ジョブ・ギャランティは、アメリカではすでに政治のメインストリームにまで進出したとされる。2019年のある世論調査によれば、民主党支持層の87%、共和党支持層の71%がジョブ・ギャランティを支持している*1。したがってこれからのアメリカの政治トレンドを知りたい人にとって必読書と言える。

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 日本でも、ジョブ・ギャランティと一体であるとされる経済学理論「MMT(現代貨幣理論)」を論じる本の中で、ジョブ・ギャランティについての部分的解説はある。しかし本書のように1冊まるまる使って、包括的にジョブ・ギャランティのみを論じた信頼に足る書籍は、未だ邦訳されたことがない。このため本書『ジョブ・ギャランティの論拠』は、MMT(現代貨幣理論)に関心を抱く人にはとりわけ貴重だ。「ジョブ・ギャランティの教科書」となるであろう本書が邦訳されれば、これを叩き台として議論を深めることができ、ジョブ・ギャランティの大幅な知名度向上も期待できる。

 MMTに関心がある人だけに留まらず、本書はより幅広い読者にまで届く可能性を秘めている。大きな理由は、著者であるチャーネバの語り口が、とても身近かつ倫理的であるためだ。チャーネバは、労働問題で苦しむ人々の立場に寄り添って世界を眺める。そしてこれらの人たちが希望を抱けるビジョンを提示していく。具体的には経済の循環から必然的に生じる失業や、貧富の格差の固定化、パワハラや低賃金などのブラック労働環境、人種や性別や障害に基づく差別的扱いなど、労働にまつわる憂鬱な問題を取り上げる。そして「主流派経済学」の「神話」(ドグマ)が、こうした問題を維持するように働いていること。また反対に「神話」とお別れして、ジョブ・ギャランティを導入すればこうした問題は除去できるのだということを、論理とデータに基づき説得する*2。倫理的にはとてもカタルシスがある。

 細かな不満点はさておき、コロナで苦境にあえぐ人たち、現状の最低賃金で厳しい生活を強いられている人たち、長期不況で取り残されてしまいロストジェネレーションと呼ばれる人たち等を考慮した時、本書は日本で出版を急ぐべき本だと考え100点を付けた。本記事では、チャーネバの論述が有する論理性と倫理性をできるだけ再現する形で要約を行い、最後に評価を行った。

原題

The Case for a Job Guarantee /出版社:Polity 2020年7月刊行

https://www.amazon.co.jp/dp/1509542108

著者について

パヴリーナ・R・チャーネバ(Pavlina R. Tcherneva):ニューヨーク州にあるバード大学の経済学准教授で、同大学のレヴィ経済研究所の研究員でもある。現在は現代貨幣理論(MMT)と公共政策を専門とする。

Twitter:@ptcherneva

巻頭言

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 私たちは今、かつてないほど「ジョブ・ギャランティ・プログラム(JGP:雇用保障プログラム)」を必要としている。何十年にもわたる緊縮財政のせいで、公共部門の基本的な仕事やサービス、組織はボロボロになった。このせいで今回のパンデミックへの対応の準備は全くできていなかったし、次の社会的危機への準備もできていない。なぜなら国民は「連邦政府が資金不足に陥る可能性がある」という「神話」を常識であると信じ込み、緊縮財政をしぶしぶ受け入れてきたためだ。しかし新型コロナのパンデミックが、つい先日までの常識を茶番に変えた。

「生産性が落ちてしまう」と脅されて最低時給の15ドルへの引き上げが批判されていたが、今では「エッセンシャルワーカー」をもっと大切にせよと逆のことが言われるようになった。以前は国民皆保険の実現などアメリカでは夢のまた夢だった。しかし我々の多くは今、それが生きるために絶対に必要だと信じるようになった。「連邦政府の財源は底をつきかけている」と言うつくり話を信じていた国民は、政府がコロナ禍に対処するため、超党派で2兆2,000億ドルもの支出を決定した光景を目撃した。昨日の非常識は今日の常識へと変わった。要するに問題は財源ではなく、支出しようとする政治的意志だ。

 次になんらかの公的支出が必要となった時、もし政治家に「でもどうやって政府がその費用を払うというんです?」と尋ねられたら、こう答えればよい。「コロナ禍で政府がやった時と同じようにです」と。

はじめに

 アメリカの失業率が戦後最低の3.5%になるまでに、金融危機から11年という長い年月を費やした。それでもまだ数百万人が仕事を求めてあえいでいる。もっと良い政策はなかったのだろうか? 本書の答えは「ジョブ・ギャランティ Job Guarantee」だ。

 ジョブ・ギャランティとは、仕事を探している「すべての人」に、雇用を提供する公共政策である。政府は介護、環境、リハビリ、小規模なインフラプロジェクトなど、幅広い分野で公共サービスの仕事の機会を提供する。それも、まともに生活できる賃金で、福利厚生を伴い、社会的意義のある仕事を提供する。

 それともあなたは、「人生に保証はないのだから、仕事がないのもまた自己責任だ」と突き放すだろうか。けれども「雇用される権利を保障するための公共政策」というアイデア自体は、実は昔からある伝統的なものだ。そして このアイデアが長生きなのは、私たちに備わった深い道徳性に根差しているからだ。世界人権宣言や、フランクリン・ルーズベルト大統領が提案した「経済の権利章典 Economic Bill of Rights」でも明記されている。公民権運動の課題でもあった。

 今日、ジョブ・ギャランティは「グリーンニューディールの最も重要な一面」であると言われている。グリーンニューディールとジョブ・ギャランティは、気候変動と経済的不安定性という、一見すると別物のようでいて、実際には有機的に絡み合った2つの問題解決を目指す。というのは環境保護が実現された後に大量の失業者が残る社会も、失業は解消されるが環境破壊は止まらない社会も、どちらも不完全だからだ。2つの課題に対しジョブ・ギャランティは、環境保護に必要な仕事を生み出すことで、失業を解消する。この一挙両得のアプローチによって人的資源・自然資源を有効活用し、効率的(エコ)な社会を実現する。次の章からはこのビジョンを具体的に論じる。

 これまでの主流派経済学の常識では、非自発的失業は「気の毒だけどしょうがないよねぇ」と言ったことだった。主流派経済学者はそれを「自然」(自然失業率)と呼んで、「最適」なレベルの失業率なるものを考えてきた。それどころか主流派経済学者によれば、経済が上手くいくためには、適切なレベルの失業者数が必要不可欠であるとされる。こうした考えは、未だ検証されざる現代の神話であり、悪しき経済学でもある。

 「失業は、グローバル化した世界における不可避の自然現象である」との信仰も、 多くの人々の心に染み込んでいる。こうした考えの人は、失業者や貧困者に対して、景気が良い時には、「景気が良いのに就職できないのは、あんたがスキルアップしていないことの結果だ」として責めたり、薬物乱用や犯罪歴といった「モラルが欠如した個人」への当然の報いであると責める。失業者は、こうした解釈によって人間性をも奪われる。読者の中には、このような他罰的な考えを抱く人がいるかもしれない。本書が考えを変えるきっかけになれば幸いだ。

第一章 良い職のためのパブリックオプション

 ここ数十年、庶民の所得はなかなか上がっていない。1997年に下から90%の家庭の実質平均所得は35,357ドルだったが、2017年には34,580ドルへと2.2%減少した。他方、同じ時期に上位10%の富裕層では227,843ドルから282,921ドルへと24.2%増加し、上位0.01%ともなると11,986,014ドルから19,235,681ドルへと60.5%も増加した*4

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 これとは対照的に戦後間もない頃は、不況後に経済が回復へと向かうとその利益の大半を下から90%の家庭が享受していた。ところが1980年代以降になると、経済成長による富のほとんどは、上位10%の富裕層の所得に回っている。上記画像の灰色が「下から90%の家庭」に該当し、黒が「上位10%の富裕層」に該当する。さらに悪いことに、2007年から2009年にかけての世界的大不況からの回復期では、景気が拡大したのにも関わらず最初の3年間には、下位1%の家庭で平均実質所得が減少している。要するに半世紀あまりでトレンドは大きく変わったのだ。現代の不況は、金持ちをますます富ませ、貧者をますます貧しくしている

 無数の履歴書を送ったが、「好調な経済状況」であったとしても、安定した高収入の仕事が見つからないという人は多いだろう。もしかすると、それはあなたの年齢、性別、ジェンダー、肌の色、犯罪歴などのためかもしれない。運よく採用されても、その会社は福利厚生がない低賃金のひどい待遇だったりする。長い通勤時間と不規則なシフトのせいで、子供と遊んだり宿題を見ることができなかったりする。あるいは、あなたは上記の人々とは違って収入や福利厚生に恵まれてはいるものの、毎日のように上司があなたに冷酷なパワハラを仕掛けるのだ。けれど安定が欲しいあなたは、悔しくて辛いけれどこの会社に残らざるを得ない。こうした腹の立つ状況を、ジョブ・ギャランティで一変させようではないか。

 まずはジョブ・ギャランティの中身と、それが切り開くあなたの生活と将来をざっと紹介しよう。今回紹介するのは、身近な地域コミュニティに特化した仕事の数々だ(だからあなたの通勤時間も短くなる)。これらの仕事の時給は15ドル、福利厚生・交通費補助あり。雇用形態は、事情に合わせてフルタイムとパートタイムから選ぶことができる。一例を挙げると歴史団体の仕事では、地域の地図や記録をデジタル化する。グリーンインフラ政策には水道管の交換や、市立公園の裏手にある空き地の清掃の人手が必要だ。

また、もし異常気象や環境災害に見舞われたならば、復旧・復興のための人員や、地域の消防・洪水防止プログラムのための人員も必要だ。こうした仕事は、ジョブ・ギャランティが行われる前は存在しなかったか、人員などのリソースが大幅に不足していたものだ。加えて、高卒認定資格など各種資格の取得、職業訓練、悩み相談や心理カウンセリングも充実している。このような仕事とトレーニングを、仕事を求める「すべての人」に提供する。もちろん提供にあたっては、肌の色や犯罪歴による差別もしなければ、能力に基づく排除も行わない。

 ジョブ・ギャランティ事務局は、あなたがより良い給料の職場へと移行するサポートをも手掛ける。ジョブ・ギャランティ導入後には、経済が成長すれば、企業はジョブ・ギャランティが提示するものより良い条件の求人でないと、求職者を惹きつけるのがきわめて困難になる。このため〔民間企業では〕昇進の機会があったり、フレックスタイム制だったり、在宅勤務であるといった案件が豊富となる。経験とトレーニングを積んだあなたは良い職を見つけるとともに、ジョブ・ギャランティに別れを告げて、次のチャンスを掴むために旅立てるようになるだろう。

 いや、ひょっとするとあなたは、高いスキルを持ち高収入の専門職に就いていて、ジョブ・ギャランティを必要としていないかもしれない。しかし想像してみて欲しい。ジョブ・ギャランティによって、あなたの近所のコミュニティは復興し、あなたが普段目にする道路や公園がきれいになり、水道管などのインフラが衛生的になる様子を。町から下品な落書きが消えた光景を。失業が減ったことで、あなたの住む地域の犯罪率も低下するだろう。あなたの子どもたちは、どんなに喜ぶことだろう。

 あなたはもしかすると、フードスタンプを利用した事があるかもしれない。フードスタンプ〔食料等を困窮者に直接給付する、日本における生活保護に近い制度〕に関する、スティグマ(社会的な蔑視)も大幅に減らすことができる。空白の多い履歴書を何度も送って、そのたびに企業から何度も断られる悔しさ。フードスタンプなどの政府プログラムを申請するストレス。こうした悩みからもジョブ・ギャランティはあなたを解放する。

 ここまでは、あまりにうまい話に聞こえるかもしれない。「自然失業率があるじゃないか」「政府が雇用を創出することなんてできっこない」「労働市場を歪める」「失業の恐れがなくなると人は働くなくなってしまうよ」「生産性が低下するじゃないか」「莫大なコストがかかる」「政府は何百万人も雇用しなければならなくなる」などど人によっては反論するかもしれない。

 以下に続く章で、これらの疑問に全て答えてみせよう。そして「失業を前提」とした主流派経済学は「悪しき経済学」であることを示してみせよう。

第二章 崩壊した現状の厳しい対価

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 「小学校に入りたくても入れない子どもの割合は、5%程度が最適である」とか、「人口全体に対して飢餓の人は、5%程度が最適である」とか、そんな冷酷な言い方は聞いたことがないはずだ。なぜなら現代社会の道徳水準では、政府はすべての国民を義務教育の欠如や、飢餓から救うために全力を尽くすべきだと考えられているからだ。

 ところが、経済学者は「最適な失業率」なる理想を、当たり前のように想定している。彼らは「失業は避けられず、経済を円滑に機能させるために一定の失業者が必要である」と語ることが多い。2019年1月のジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会FRB)議長はこう述べた。「自然失業率という概念が必要だ。失業率が高い、低い、ちょうどいい、といった感覚が必要なのだ」と述べた。

 多くの経済学者は、失業率が「低すぎ」て、労働力市場が「逼迫する」場合、企業は労働者を惹きつけるために賃金を上げざるを得ず、そのコストを回収するためにモノの価格を引き上げなければならなくなると懸念する。言い換えると、低失業率は高インフレ、あるいはさらなるインフレの加速を引き起こす危険性があるとされる。そこから経済学で最も間抜けな概念の1つである「インフレ率を上昇させない失業率(NAIRU: the Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)」なるものが出てくる。そしてインフレと戦う中央銀行は、NAIRUを中心に据えて経済の微調整(ファインチューニング)を行う。しかしこのNAIRUが曲者だ。

 米国議会予算局(CBO)は戦後、「失業率の自然な水準」は4.5%~6.5%であると主張してきた。ところが現在、公式の失業率は3.5%にまで低下した。パウエル議長は「失業とインフレの関係は崩れた」と認めたものの、一流のエコノミストたちは元気にNAIRUを擁護し続けている。そしてFRBの目標は明確に、失業率が「低すぎる」ときに投資や雇用を滞らせることにより、インフレを管理することだ。

 この微調整(ファインチューニング)アプローチには問題点が3つある。第一に、NAIRUは神話である。言い換えると経済学者とFRBは「失業ーインフレ関係」の本質を解明できていないのだから、彼らの説明には根拠がない。第二に、自ら認めるようにFRBは、インフレ単体に関してすら信頼に値する理論を持っていない。第三に、NAIRUやインフレ目標が解明できていないのに、FRB高官は少なくとも2014年以降、経済は完全雇用に達したと主張している。この問題は世界的に深刻だ。2012年に欧州委員会が発表した「年次経済予測 the Annual Economic Forecast」では、恐慌レベルにあるスペインの失業率26.6%を、自然失業率と判断し、放置を決め込んだ! しかし失業率が恐慌レベルから低下するにつれ、欧州委員会はNAIRUの推定値を下方修正し続けた。したがってNAIRUとは、政府が失業対策に取り組まないという怠慢や失政に言い訳を提供していたと結論せざるを得ない。

 でも昔のFRBはNAIRUを信奉していなかった。FRBは1945年総務会報告書において、「失業とインフレという二つの悪を…相殺するのではなく、両方とも防止しなくてはならない」と主張していた。なかでも当時のFRBは「雇用の保証」を、「ナショナルミニマム(国民生活環境最低水準)*6概念の…おそらく最も本質的な部分」と考えていた。あぁ、今日のFRBのスタンスといかに異なっていることか…。

 「雇用は豊富にあるから、失業は自己責任である」という神話も蔓延している。事実を言うと、雇用は豊富ではない。企業は職歴の空白が少ない人を雇いたがり、特に長期失業者の雇用には消極的だからだ。調査によると企業は、「9ヶ月の失業は4年間の労働経験の喪失に相当する」と考えている。このような企業の態度が雇用のパラドックスを生む。すなわち一方では何百万人もの人々が仕事を求めているが、他方で企業は人材不足に頭を悩ませている、というパラドックスだ。

 また民間企業は、人種、年齢、ジェンダー、性別によっても求職者を差別し、排除する。家事専業の親が二次面接まで進める確率は、既に雇用されている親の約3分の1に過ぎない。犯罪歴のないアフリカ系アメリカ人は、犯罪歴のある白人に比べて、仕事のオファーや二次面接の連絡を受ける頻度が低い。 障がい者は総がかりで雇用機会から締め出されている。NAIRUは、このような犠牲の元で維持されている。

 心理学、認知科学、公衆衛生などの豊富な研究が示す 、失業、低賃金、不本意なパートタイム雇用の社会的・経済的コストの大きさには、ただただ圧倒されてしまう。失業者はアルコー ル依存、身体疾患、うつ病、不安症などの罹患率も高い。 これは世界的に見ても同様の傾向だ。また失業は、都市の荒廃と経済的困窮の原因となり、暴力犯罪の引き金となる。加えて失業は、ほとんどの国で所得格差を拡大させ、人種・民族間の緊張を悪化させる。失業は社会を分断し、コミュニティを荒廃させる。まとめると失業や劣悪な労働環境は、生物的な「病気」にさえその害悪の大きさで並ぶものであり、このため慢性的かつたちの悪い致命的な「病」とさえ呼ぶことができる。

 失業は経済成長をも阻害する。ある試算によると、2000年代後半から2010年代初頭までの大不況の期間中、 米国経済は高い失業率のせいで毎日100億ドル(1兆円あまり)もの生産量を失っていた。言い換えると私たちは毎日、莫大な数の財やサービスを手放し、失業による重い個人的・社会的・経済的コストを負担している。それは私たち自身が失業を自然なこと、避けられないこと、必要なことであると受け入れてしまっているためだ。

第三章 ジョブギャランティー:新しい社会契約とマクロ経済モデル

 アメリカ経済の黄金時代には、民主党であれ共和党であれ、政治が雇用を守ることは一般的だった。しかしレーガン政権後の市場原理主義の勝利により、雇用を守る考え方は消滅してしまった。

 レーガン政権以降、財政政策は後退し、規制緩和、賃金抑制、トリクルダウンなどの「健全な経済政策」を装った政策と組み合わされた。その結果、戦後最大となる上位層への富の移転と、最も遅い給与所得の回復率に陥った。左派でさえも雇用という基本的な権利をすべての人に保証することは諦めてしまった。

 正統派経済学者は、「労働力の価格を含めたすべての価格は、市場で決定されるべきだ。『自然失業率』がインフレに対する防波堤となるべきだ」と主張し、雇用の惨状を悪化させた。こうしてマネタリズムとNAIRUを象徴とする新たなイデオロギーへの転換は完了し、完全雇用の理念は放棄された。企業は雇用のアウトソーシングや安価な移民労働者の雇用をちらつかせて、失業の恐怖を煽るようになった。労働組合も失業の脅しになすすべがなかった。したがっていま最も重要なのは、NAIRUを経済政策の道具箱から永久に追放することだ。

 といってもこれは、既存の資本主義社会をひっくり返す革命を起こそうという類の話ではない。労働力のような、経済における重要資源に何らかの形の保証 guaranteeと価格支持 price support を与えるべきだという考えは、「ラディカル」な提案ではない。例えば農畜産物の価格支持制度はありふれている*7。世界各国の政府は農産物などの一次産品の価格を設定し、安定させる方法を用いてきた。一次産品への需要が減ったときは政府が買い上げて貯蔵庫に入れ、一次産品への需要が逼迫すると、貯蔵庫から出して売りに出すのだ。「バッファーストックプログラム」と呼ばれるこの方法を用いると、一次産品の価格は安定する。

雇用においてこれに相当するのが就業保証、すなわち政府が失業者をある水準の賃金で雇用する保証を設けることだ。ちなみに最低賃金制度は、「ジョブギャランティ ≒ 政府による一次産品の余剰分買い取り」にあたる支えがないために、価格支持政策としての力が弱い。なぜなら企業は「雇わない」という行動をとれるため、その場合は最低賃金が幾らであっても実質賃金は時給0円(=失業状態)だからだ。

 不況の間はジョブ・ギャランティが求職者を吸収し、崩壊しかけた総需要を底支えする。景気が回復し、企業がジョブ・ギャランティよりも好条件で雇用を提示すると、ジョブ・ギャランティから民間部門の雇用へと労働者が移行する。これにより政府の支出と人件費は減少する。このため民間企業が景気回復期にふたたび雇用を増加させ、労働力需要の増加が起きても、潜在的インフレ圧力は緩和される。言い換えるとジョブ・ギャランティは、好況と不況という経済循環に対し、その変動と害を小さくする強力な自動ショックアブソーバーを提供する。

要するに、ジョブ・ギャランティはデフレ圧力とインフレ圧力を相殺する。その理由は不況時にはジョブ・ギャランティの支出が大きくなり、好況時には支出が小さくなるからだ。したがって慢性的失業状態を前提とした現状の主流派経済学よりも人道的なだけではなく、経済の安定にとっても優れたインフレ抑制メカニズムである。

 ここまでの議論を総括しよう。マクロ経済安定化政策の世界では、選択肢は2つしかない。すなわち、既存の慢性的失業維持政策に頼り続けるか、それをジョブ・ギャランティに置き換えるかだ。ジョブギャランティは、良い仕事をするための労働基準を確立することで、新しい社会契約を結ぶものだ。新しい社会契約は、低賃金や失業といった非人道的な状態を終わらせるべきだとの価値観に根差している。週35時間の労働に対してフルタイムの給与と手当を提供すれば、長時間労働の慣行に待ったをかけることもできる。ドイツとフランスではすでに、週35時間労働が実現している。

 製造業が多くの雇用と、高い賃金を提供した時代を懐古しても、あの時代には戻れない。産業構造は不可逆的に変化してしまっており、今の主流は相対的に低賃金のサービス業だ。 ジョブ・ギャランティはサービス業の賃金を向上させる事ができる。こう言うと、「企業は国内の賃金が高くなれば、低賃金の国に仕事をアウトソーシングするのでは?」と懸念するかもしれない。しかしアメリカで全労働者の約80%を占めるサービス業のほとんどは、海外にアウトソースできないから大丈夫だ。

第四章 しかし、その費用はどうやってまかなうのでしょうか?

 「しかし、どうやってその費用をまかなうのか」という質問は、今日の政治において最も誤解を招きやすい。その主な理由は、「アメリ連邦政府が資金不足に陥る可能性がある」という神話を前提にしているからだ。政治家はこの神話を利用して、公債発行に上限を設け、不当なペイゴー原則*8を課し、痛みを伴う均衡財政案の名のもとに、国民に必要不可欠なプログラムを資金不足に陥らせている。またほとんどの経済学者もこの神話の味方だ。NAIRUを広めたように、彼らは債務や財政赤字の対GDP比のことも懸念してきたからだ。

 ジョブ・ギャランティの「財源」を心配する声に答えよう。世界のほとんどの政府は、自国の通貨を発行し管理する独占的特権を持っている。言い換えると政府が独占的に持つ「通貨主権」は、経済活動の資金調達のための、無条件かつ柔軟な支出権を政府に与える。このことを現代貨幣理論(MMT)は明確にした。

 このことを一般の人々も直感的に理解している。銀行の救済、大富豪の減税、終わりなき戦争などの資金を調達する際、アメリカ政府が難なく「お金を見つける」様子を目の当たりにしてきたからだ。中国から借金することもなく、未来の子孫から奪うこともなく、裕福な家庭から税金をかき集めることもなく、資金は提供されている。議会は、政策と計画(プログラム)に投票し、予算を計上し、小切手を振り出す。小切手は連邦準備銀行がすべて支払う。このようにしてこれまで、アメリカ政府の小切手が不渡りになったことなど全くない。

 世界金融危機後に、ベン・バーナンキFRB議長でさえも明確に述べている。2008年9月に議会が予算を計上し、 FRBが何千億ドルもの銀行不良債権の購入を承認した後、バーナンキはこう明言した。「納税者のお金ではない......我々は単にコンピュータを使って、銀行預金残高に記号を付けているだけだ」*9。通貨主権のことを理解すると、私たちの目の前にある経済的可能性から、国民が政府に正当に要求できることまで、すべてが一変する。したがってジョブ・ギャランティが「財源」に困って探し回ることはない。

 ではジョブ・ギャランティを実施すると、その経済的収支はどうなるのだろう。定評のあるFairモデルを用いたシミュレーションで、10年間の効果を試算した研究がある*10。まず必要な予算は、年間で対GDP比1.0~1.3%、最大でも1.5%未満に留まる*11。そしてジョブ・ギャランティがピーク時に1,160~1,540万人を雇用し、15ドルの時給と手厚い福利厚生を提供したものとする。その結果、実質GDPが約5,000億ドル押し上げられ、民間雇用を300〜400万人増加させた。マクロ経済学的に重要なインフレ効果を生じさせずにである。これは上手なお金の使い方だ。

第五章 何を、どこで、どのように:仕事、設計、そして実施

 ジョブ・ギャランティはその運営に非営利団体や協同組合を加えることで、分散型の参加型民主主義に力を与え、市民社会を拡大する。州、自治体、非営利団体社会的企業、協同組合などが地域のニーズを評価し、それらのニーズに適した仕事を計画する。具体例として以下のような仕事を挙げることができる。

空き家の清掃や資源の再生・レストアなどの小規模なインフラプロジェクト。学校の庭・都市部の農場・コワーキングスペース太陽電池パネルなどの整備。工具の貸し出し、学習教室やプログラムの運営。さらには公園などの遊び場の建設。歴史的名所の修復。地域映画館の運営。カーシェアサービス。リサイクル。水の回収の取り組み。生ごみ処理。オーラルヒストリー(口述歴史学)プロジェクトなどがある。こうして、地域のニーズによって職を創設することは、単に失業を無くすだけに留まらない、地域コミュニティを復活させ、草の根民主主義を活性化させることにも繋がるだろう。

 しかし連邦政府が雇用創出に責任を持つべきだとのアイデアは、常にいくつかの反射的な不安を引き起こす。不安と疑問に順番にこたえていく。

大きな政府による買い占めだ」:政府の肥大化を心配するのは、あべこべである。なぜなら、私たちは既存の「大きな政府」が失業と不完全雇用と貧困による経済的・社会的コストに対処するため、行政努力と何千億ドルもの資金、時間、資源を非効率的に費やすのを目の当たりにしているからだ。前述のように、失業対策の費用はとても効率が悪い。ジョブ・ギャランティは「大きな」連邦政府のコストを削減すると同時に、家計、企業、州のコストもより効率的に削減するだろう。

「管理できっこない」:現在、アメリカの初等・中等教育は約5,100万人の生徒に教育を保証しており、メディケア、メディケイド、CHIP(児童医療保険プログラム)は7,400万人を、社会保障は5,400万人をカバーしている。これらのプログラムの総支出は年間でおおよそGDPの14%だ。対して、ジョブ・ギャランティは年間1,100~1,500万人を雇用し、総支出はGDPの1~1.5%ほどとなる。つまり管理の規模で言えば今ある教育・福祉制度よりはるかに小さい。

「生産性を削いでしまう」:ジョブギャランティが非生産的であるという主張もまた、逆さまである。失業中の人を雇用すると、その人が失業中であるよりも生産性が低くなるということはない。 

「無意味な仕事 make-work*12を作るだろう」ニューディール政策は、無意味な仕事を生むとしばしば冷笑されたが、 それでもコミュニティ、経済、人々の生活を再建した。ジョブ・ギャランティに好意的な批評であっても、「ジョブ・ギャランティは、必要な人すべてのために何らかの仕事を生み出すプログラムなのか、それとも生産的なプロジェクトを生み出すプログラムなのか。前者であれば有益な仕事ばかりになるはずがなく、後者であればすべての人を雇うことはできないだろう。つまり目的が混乱している」と指摘する。しかし、これは誤った二択だ。ジョブ・ギャランティは失業による社会的・経済的な負の影響を除去し、既存の失業政策よりも経済を安定化するという意味で、今よりも「生産的」なのだ。何より、まともな仕事を得られるようにすることは「人権」の問題であり、失業状態は悲惨であると認識することが必要だ。

「実現するだけの政治的支持がない」:数十年前から、「政府は失業者に雇用を保証すべきか」を問う調査が行われてきた。その結果は一貫して過半数の支持を得ている。具体的には有権者の60%以上であり、最近の調査では有権者の78%、うち民主党支持層で87%、共和党支持層でも71%に達している。この数字はジョブ・ギャランティが左右イデオロギーの分断を超え、超党派有権者の共感を得ていることを示す。にも関わらず、これまで政策立案者はジョブ・ギャランティに注目していなかった。そう、これまでは。アメリカでは2020年の有望な大統領候補者数名が「ジョブ・ギャランティ」を支持し、地方や全国レベルの候補者数十名の綱領に盛り込まれている。また、グリーンニューディールの目玉プログラムとなった。つまり、ジョブ・ギャランティはすでに政治のメインストリームへと進出している。

第六章 ジョブ・ギャランティグリーンニューディール、そしてその先へ

 本書はこう主張してきた。ジョブ・ギャランティは本質的に「グリーン green(環境にやさしい)」な提案である。その根拠は、「人的資源」と「自然資源」という二つの重要資源が、経済において放置され荒廃していること。そしてジョブ・ギャランティがこうしたネグレクト(放置すること)の問題に対処する政策であるためだ。

 グリーンニューディールにおいて最重要の構成要素は「ジョブ・ギャランティ」だと言われる。しかし「ゼロ・エミッション*13のような環境政策と、雇用や医療、住宅を保証する政策をごちゃ混ぜにしてもよいものか」といった困惑が、JGPの批判者のみならず共感者の間でも生じている。

 しかし気候政策とは、実のところ雇用や医療、住宅が関係する社会的・経済的な政策だ。すべての気候変動対策とその実施方法は、経済的・社会的・政治的に予期せぬ結果をもたらすおそれがある。したがって、気候の脅威にどのように取り組むかという問いに答えることは、必然的に私たちの社会的・経済的生活をどのように再編成するかという問いに答えることでもある。

つまりエコな暮らしを実現できる一部の恵まれた人々がいる一方で、「化石燃料関連産業で働いていたけど失業した」といった事により取り残され、エコな暮らしができない多くの人の格差を放置するならば、環境対策として不十分だ。また社会的・経済的に不正でもある。まともに暮らせる賃金 living-wage*14での雇用保証は、気候変動対策に社会正義を埋め込むことで環境対策・社会的・経済的問題に同時に対処する。

結論 消えてしまったグローバルな雇用政策

 現在多くの国が、雇用創出のために輸出主導型の成長に依存しており、本質的に勝ち目のない雇用創出戦争に勝つために、「底辺への競争(労働者の待遇や自然環境対策の費用をできるだけケチって、コストを浮かす競争戦略のこと)」に参戦し、そこで働く人々を消耗させている。このため失業や不安定雇用が世界的現象になっている。

 本書では「ジョブ・ギャランティ」を、どちらかというと1国のみの政策のように描いてきた。しかしジョブ・ギャランティは、各国の協力により実現するべきものであり、1948年のITO憲章が掲げた、「完全雇用」の理念を受け継ぐものでもある*15。ジョブ・ギャランティは、環境と経済における安全保障の欠如という世界的脅威に対処する「グローバル・マーシャル・プラン」の基礎となりうる。ジョブ・ギャランティワークフェアでもなければ、「ブルシット・ジョブ bullshit jobs」を生むものでもなく、「強制労働」でもなく、穴を掘って埋める無意味な仕事も提供しない。今日と明日に希望の持てる働き方を作り出す計画が、グリーン・ジョブギャランティと一体となったグローバル・グリーン・ニューディールだ。

評価(評者・田楽心)

 MMT派経済学者のステファニー・ケルトンは、移民やグローバリズムに反発する人々を想定し、「『海外に雇用を奪われた』という不満への最善の返しは『ならば全員に雇用を与えよう』だ。」*16と述べている。他方でこれまでの左派は、移民排斥や反グローバリズムのムーヴメントを担う人々に対し、ある時は「差別主義」のラベルを貼って非難した。そして移民受け入れや国際化など、より多くの多様性による洗礼を浴びせ続ければ、国民の外国人嫌いの「文化」「価値観」がいつかは払拭されると考えた。またある時は、「新しいテクノロジーとグローバリゼーションに対応できるよう、教育でスキルを高めましょう」と能力主義競争を煽った。この時、「雇用」というイス取りゲームの椅子の数には限りがあるため、いくら高度な教育を施しても、良いイスに座れない人が必ず出ることは無視された。

このような左派のまずい反応が、近年欧米各国で「極右」が、政治のメインストリームへと進出する後押しをしたとされる。もちろん今後も経済のグローバル化を推進し、外国人労働者の受け入れ拡大を予定する日本にとっても、全く他人事ではない。左派は、「多様性・開かれた社会」といった道徳的理想と、それが結果的にもたらすグローバリゼーションによる悪影響に直面している。そして反応は多くの場合、悪影響を無視するか、身動きが取れなくなっているようにも見える。

 これから選ぶ道次第では、海外に開かれることと国内雇用を守ることの調和を、ある程度は実現できるかもしれない。ジョブ・ギャランティが台頭し、職を求めるすべての国民に、「まっとうな賃金、まっとうな福利厚生の得られるまっとうな雇用を法的権利として認め、政府による『就業保証プログラム(JGP)』を制度化する」*17選択肢が生まれたためだ。この楽観的ビジョンの前提として、ジョブ・ギャランティが期待するに足る制度と言えるかを吟味する必要がある。

 吟味の第一歩として、本書の主要な論点をおさらいしよう。第一に、主流派経済学における「インフレ率を上昇させない失業率(NAIRU: the Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)」を中心とした政策は非人道的であり、またその合理的根拠は薄い。第二に、ジョブ・ギャランティは主流派経済学の依拠する「NAIRUという神話」に頼るよりも倫理的な方法であり、さらには経済を安定化する。第三に、ジョブ・ギャランティは財政的に実行可能である。第四に、ジョブ・ギャランティグリーン・ニューディールは不即不離のものである。

 このうち第一と第二の論点に関しては、本書で繰り返し指摘されているように、まずNAIRUは実証的に非常に怪しげな概念であるように思える。実際、我々はここ20年、ほとんどの先進国で中央銀行によるインフレ目標の達成の失敗と、インフレと失業率の関係が安定していない事実を目撃してきた。そして、NAIRUが仮に事実だとしても、たとえ数字のうえで「数パーセント」といった非常に低い失業率だとしても、その抽象的な数値の後ろに、何百万人もの生身の貧困者・失業者が現実に存在しているのだということを、よくよく思い浮かべて欲しい。多くの失業者を維持することでインフレを抑制しようとする政策は、非人道的だ。この論点はチャーネバ以外にも、例えばMMT派経済学者のランダル・レイも指摘している。

つまるところ、貧困と失業は、低インフレのみならず通貨の価格を維持することの代償と見なされている(これは「フィリプス曲線」の主張ーー賃金とインフレを抑制するためには、多くの失業者を必要とするーーと関連がある)

…[中略]…

物価と為替レートの安定を達成するための主要な政策手段として貧困と失業を利用することに対しては、強い倫理上の反対論がある。*18

ジョブ・ギャランティという「第四の道(別の方法)」があるというならば、一度試してみる価値はある。

 第三の論点に関しては、対GDP比の1.0~1.5%程度で実現できるならば、日本ならば年間5~8兆円程度で実現ができる。加えてJGPによって既存の失業対策費用は小さくなるから、実際の費用はこれより小さいものになる。専門家たちが年間100兆円程度が必要であると見積もるベーシックインカム(BI)と比べた時、これは大きなアドバンテージだ*19。なにしろBIの20分の1の費用で実施できるのだから、その分、多様な考え方の国民と政治家を動かして実施しやすくなる。もちろんチャーネバが論じたように、JGPへの支出をMMT(現代貨幣理論)で正当化することに支持が広がれば、JGPはより実現しやすくなる。

 第四のジョブ・ギャランティグリーン・ニューディールとの関係について。本記事でもチャーネバが、「ゼロ・エミッションのような環境政策と、雇用や医療、住宅を保証する政策をごちゃ混ぜにしてもよいものか」といった困惑の声を紹介している*20。こうした批判や疑問は当然に湧いてくるものだと私も思う*21

 この点に関するチャーネバの主な主張は、第6章にまとまっている。これによると、ジョブ・ギャランティは気候変動対策に「社会正義」の役割を組み込む。たとえ環境にやさしい新しい社会システムに移行したとしても、貧困層の人々がエコな商品を買えなかったとしたら? 持続可能な農産物を育てても、食糧難の人々が依然として残るとしたら? だからこそ、環境に配慮した新しい社会システムへの移行と、格差是正との同時進行が必要だ。チャーネバのこうした主張には一定の説得力がある。加えて、貧富の格差が大きい国ほど二酸化炭素排出が大きいことや、大企業の二酸化炭素排出が大きいことも専門家により指摘されている*22。よって経済格差対策と気候変動対策には関連性がある。

 そして実は2010年代以降、気候変動対策を正義や公正さの枠組みでも捉えていこうという新たな波が生まれているという*23。2000年にハーグで最初のClimate Justice(気候正義)サミットが開かれてから、「気候正義」という言葉も広まった。気候正義も社会正義も、根は「正義」(社会的格差の是正含む)を希求する動機は同じであるといった理解はできるし、チャーネバの議論もこの思潮から理解できる(ディープエコロジー思想を前提すると難しくなるのだが)。また人間社会の格差を放置し、気候変動対策を重視する場合よりもはるかに支持を得やすいと思われる。こうした絡み合う問題に対する解決策の提供は、「気候変動対策へのジョブ・ギャランティの貢献」である。

 それでは、反対に「ジョブ・ギャランティへの気候変動対策の貢献」は何になるのだろう。チャーネバは、グリーン・ニューディールにおけるジョブ・ギャランティの役割に、古い産業労働者のためのセーフティネットおよび新しい産業への移行支援機能を挙げている。典型的には、化石燃料関連産業で働いてきた人々が失業した時、受け皿がなくてはならない。この時にジョブ・ギャランティが雇用の「セーフティネット」の役割を果たすそうだ。また地域コミュニティのニーズに応える仕事は、もちろん社会的意義がある。

言い換えるとグリーン・ニューディールの役割は、ジョブ・ギャランティという「入れ物」に、社会的に有意義な仕事という「中身」を与えることであると一般化できそうだ。例えばジョブ・ギャランティは「穴を掘ってまたその穴を埋める」仕事を提供することもできるのだが、そんな雇用対策に大きな支持は得られないだろう。チャーネバは本書内で、ジョブ・ギャランティは「ブルシット・ジョブ bullshit jobs」ではないと述べている。ジョブ・ギャランティもまた、社会的に意義のある仕事を必要とするのだ。その点、グリーン・ニューディールという一大プロジェクトは、社会的に意義のある仕事が豊富に生まれる領域だから好都合だ。

 現状一部の左派によって唱えられている「脱経済成長」による温暖化対策よりも、はるかに妥当だと考えられる。「脱経済成長」政策を真面目に実行すると、(一部)労働者の失業や賃金の低下が不可避に発生すると考えられる。そもそもここ20~30年間の日本は、ゼロ成長にかなり近い状態である。この状態で一番苦しんできたのが貧困層や失業者や、ある世代の人々だ。それでもなお「ゼロ成長でもいい」と啖呵を切れるのは、一部の人々に限られる。それでもゼロ成長でも良いという姿勢はとても、「公正な移行 Just Transition」を満たす姿勢とは言えない。公正な移行とは、環境に配慮する新しい社会への改革・移行に際しては、経済的に貧しい人が取り残されてはならず、公正な移行をするべきであるという道徳規範だ。ジョブ・ギャランティは「公正な移行」をスムーズに行う手助けになる。

 さて、ここまでは本書に沿って比較的好意的に論評を行ってきたが、おそらく主に右派から寄せられるであろう疑問と、反緊縮派からの疑問、そして私的な運用上の疑問を2、3検討したい。

 一つは、ジョブ・ギャランティはその対象となる労働者を、「国籍や出身国」で選別するのかどうなのかという点だ。例えば日本は「技能実習生」の名を借りた期間労働者としての移民をかなりの人数受け入れている。そして時おりニュースになる彼らへの非人道的な待遇を、主に左派が批判している。技能実習生にジョブ・ギャランティを適用し、虐待が解消されるならば左派にとっては非常に良い解決だ。だが右派からは、「ジョブ・ギャランティの対象に移民・難民を含めれば、この『魅力的な』制度が誘因となって移民・難民が大量に殺到し、国家の基盤が蝕まれる」といった批判が寄せられるかもしれない。

 本書で国籍をめぐるこうした問題は、ほとんど検討されていない。ジョブ・ギャランティは間違いなくブランコ・ミラノヴィッチが「市民権プレミアム」と呼ぶ、「ある国の国籍の魅力」を高め、そのことが貧しい国や階層出身の移民を惹きつけてしまう。もしかするとチャーネバは左派として、あるいは東欧にルーツを持つアメリカ人として、移民・難民を救済するのは当たり前だと考えているのかもしれない。あるいは、「移民は大量にやってくるもの」「既に悲惨な待遇の移民が大量に存在している」というアメリカの当たり前の現状を、前提としているのかもしれない。

 とはいえ、そもそも移民や技能実習生を「大量」に受け入れるべきか否かは、ジョブ・ギャランティとは別に論じるべきことで、ジョブ・ギャランティに固有の問題とは言えない。このことを前提した上で、一度受け入れた移民や技能実習生については、他の国民と同じくジョブ・ギャランティの対象とするべきだ。もしそうせず、ジョブ・ギャランティが失業者を国籍や出身国という属性で選別し、悲惨な境遇の労働者に見て見ぬふりをするならば、制度の論理的正当性(すべての失業者は、眠っていて活用するべき人的資源なのではなかったのか?)や、倫理的正当性(失業者を社会的属性で選別するべきではない)は大きく損なわれるだろうから。よってこの選択肢はありえないだろう。

 もう一つの疑問は反緊縮派からのもので、MMTを理論的根拠にして「政府がお金をじゃぶじゃぶ投じて、民間企業に公共事業をたくさんやらせればいいじゃないか」といったものだ。これについては、MMT派の人々は第一に「トリクル・ダウン」仮説に批判的である。言い換えると、企業に仕事とお金をまわしても、企業は自己利益を追求するため必ずしもすべての失業者を雇うことはない(慈善事業ではないのだから)。企業は長期失業者を雇うことを嫌うし、失業者をその能力によっても、社会的属性によってもえり好みし選別する。よって単なるバブル的公共事業への誘導では、貧困・格差・失業対策の決定打には全くならない。

 第二に単なる反緊縮投資はバブルを生み弾けさせ、経済を不安定化すると共に失業者を生んでしまう。このためジョブ・ギャランティの方が失業対策としても、経済の自動安定化装置としても優れているとMMT派は考える。MMT自体は中立な説明理論だが、その理論的根拠として、貨幣の本質を債務から派生するものであると規定し、こうした債務・債権関係が不安定なものであるという事実が前提とされている。すると、そこから導き出される政策は必然的に不安定性を和らげる政策となる。加えてボトムアップに労働者の利益を考える姿勢は、左翼とより親和的である。MMT派経済学者のランダル・レイは次のように述べている*24

2014年、主にトマ・ピケティの有名な著作『21世紀の資本』(みすず書房)のおかげで、経済学者と政策担当者は不平等に気がついた。「上げ潮がすべての船を持ち上げるわけではない」と分かったのだ。事実、過去数十年の経済成長は不平等を拡大させてきた。

・・・

ケインズは、1960年代「ケインズ学派」によって支持された「呼び水」政策よりも、直接労働者を雇う政策を支持していた。ミンスキーが説明したように、呼び水政策は「既に富裕な人々」に有利にはたらく。チャーネバの研究は、まさしくそうした結果が生じたことを、説得力をもって示している。

 次に、労働者の心理・実存面での運用上の懸念についてである。ジョブ・ギャランティの仕事を使って、「やりがい」や「楽しさ」を感じたり「自己実現」できるのだろうか。確かに水道管の交換や空き地の清掃には社会的意義がある。しかし誰もがやりがいや楽しさを感じるかどうかは、また別だ。2018年にケルトンを含む5人のMMT派経済学者がまとめた就業保証プログラムに関するレポートでは、ジョブ・ギャランティで提供する仕事の基準に、「地域の満たされていないニーズに応えていくこと」*25が挙げられている。例えば過疎の村で農業を手伝ったり、防犯や安否確認のため、地域の見回りをするといった仕事が考えられる。日本でいえば「地域おこし協力隊」*26の賃金や福利厚生を改善したイメージに近いのではないか。本書でチャーネバが挙げた例は、その多くが典型的なジョブ・ギャランティの仕事と言えそうだ。

このため、例えば「時給2,000円を貰って、ひたすらプロの小説家デビューを目指して小説を書く仕事」を得るのは難しそうだ。この辺はベーシック・インカム派が、自分の好きな仕事や趣味に自由に打ち込めるという魅力をアピールできる場面であり、ジョブ・ギャランティの分が悪い。ただしチャーネバは、音楽、劇場、その他芸術表現をジョブ・ギャランティの事例に挙げている*27。プロ小説家ならそのスキルを生かし、エッセイの書き方の講師等の可能性はありそうだ。

 また「草の根民主主義」的なアプローチで社会システムを変えるJGPの目論見は、どこまで有効だろうか。例えば、すでに諸外国で生じている風力発電の風車の建設を巡る対立を挙げることができる。新エネルギー創出としても、雇用創出としても、風車の建設は地域レベルのニーズに見合った政策かもしれない。しかし風車は、バードストライク等の被害を考えると環境政策における動物保護の観点からはマイナスで、「音がうるさい」といった住民の抗議も報告されている*28。近隣に風車が建設されることへの「草の根」での反対運動も諸外国では発生している。このように、環境政策は何より公益を巡る複数のレベルでの対立を生じさせる以上、住民の「一般意志」が必ず一つにまとまると楽観するのは危険だ。このためトップレベルでの介入が必要となる場合があり、反対にジョブ・ギャランティに持ち込めば住民対立の火種になってしまう懸念がある。もちろん、必ずしもジョブ・ギャランティによるボトムアップか、トップダウンかという二者択一にはならないだろうから、向き不向きを見据えつつどちらも取り入れればよいとは言える。

 他にも、もし民間企業の参入を認めれば、賃金を節約するために自らの従業員をジョブ・ギャランティの雇う従業員に置き換えるかもしれない。要はジョブ・ギャランティの腐敗・利権化への懸念である。この辺はランダル・レイが『MMT 現代貨幣理論入門』で懸念に応えているので、参照するとある程度疑問は解消する*29。一言でいうと、レイは民間の営利目的の雇用主を運営から排除し、労働者協同組合などによる運営を認める。そうすると確かに腐敗や利権化は減りそうだが、雇用主が非営利目的に限定されることで、仕事の内容もかなり限定されそうな気がする。プラス面では、協同組合や非営利組織とフラットなネットワーク(分散型管理)を好む社会運動家からも、支持を取り付けやすいだろう。

 しかし大前提として、国家の力を用いる政策には政府の善き意図がなくてはならず、政府が一定以上腐敗していてはどうしようもない。日本で実施しても大丈夫だろうか。派遣会社のような組織が政府とジョブ・ギャランティ被雇用者との間に入って、悪い意味で「中抜き」することはないのだろうか。この点はやはり、悪意ある一部議員のトップダウンで進められれば、腐敗し利権化する危険がある。よって議員や国家を監視する民主主義が、ある程度まともに機能している国が前提になる。

 ところで私は、思想の賛同者に対しなんのセーフティネットも用意できないのに「会社を辞めることも階級闘争だ」、「強欲な経営者を追い出して会社を自主管理しよう」といったアジテーションを行う社会活動家に、かなり懐疑的だ。アジテーションに感化された人が会社を辞めても、経済的に上手くいく保証がないためだ。こうしたアナキスト気質の著述家は、暗黙裡に「自己責任」「自助」「放置」を押し付ける点が、かれらが批判するはずのネオリベな企業家とも重なってしまう。かれら活動家は「理不尽な資本主義社会への反抗」や、「階級闘争」という一見すると「ラディカル」な表象(イメージ)づくりには熱心だ。しかし実際の「反抗」「階級闘争」を可能にする経済的基盤を、今の会社に雇われてなんとか生きている人々や、経済的に困窮する人々にまで広げるJGPのような手堅い構想がない。

 このため会社を辞めても大したダメージを受けない恵まれた人や、いつでも死ぬ覚悟のある「無敵の人」やニヒリストだけが、「資本主義への反逆」や「階級闘争」などのオルタナティブな生きざまについて行くことができ、そうでない多くの読者は反抗や階級闘争といった「ラディカル」な表象(イメージ)を、部屋の中で映画や漫画のように消費するだけだといった状況がある。しかしジョブ・ギャランティという、国家が賃金と社会保障を提供する枠組みのなかならば、協同組合やお金になりにくいコミュニティ活動もまた、はるかに現実的な生き方になってくる。かれら「反体制的」な活動家が、国家に雇われつつ活動するのをよしとするのかは分からないにしても。

 より実務に近い問題の検討が本書にないことは残念だが、それはまだ検証済とは言いがたいアイデアと、コンパクトな本書に対し多くを期待しすぎているのかもしれない。

 そうした不満はあるものの、私はジョブ・ギャランティが日本で実際に運営される様子を見てみたいので、大きな期待を込めて100点とした。

お知らせ

 経済学101で『The Case for a Job Guarantee』の翻訳を準備しています。現在、試訳として序章と1章を翻訳済み。翻訳出版にご興味があればこちらまでご連絡をよろしくお願いします。event@econ101.jp

関連記事

MMTによる究極の経済政策「JGP」を日本に導入せよ=今枝 宗一郎(自民党衆議院議員)/エコノミストOnline 2020年8月30日

国会議員レベルでも関心を示す人がいたと知った記事。日本でもジョブ・ギャランティは導入されるのだろうか。

*1:政治専門紙「ザ・ヒル」と調査会社「ハリスX」の共同世論調査による。/“What Policy has the support of 71% of Republicans, 87% of Democrats and 81% of Independents?” DAYLY COS https://www.dailykos.com/stories/2020/1/7/1898491/-What-Policy-has-the-support-of-71-of-Republicans-87-of-Democrats-and-81-of-Independents
“The Job Guarantee, the Green New Deal, and Beyond”章を参照のこと。

*2:ランダル・レイは次のように評価している。「不公平な扱いを受けている労働者が就業保証プログラムで働くという選択肢を手に入れることで、人種や性別による差別もある程度減るだろう。もちろん、このプログラムだけでは差別は無くせない。とはいえ、平等を求める闘いにおいて完全雇用が重要な手段であることは、長い間認識されてきた」(L・ランダル・レイ 著, 島倉原 監訳 鈴木正徳 訳, 中野剛志 解説, 松尾匡 解説『MMT現代貨幣理論入門』410-411頁)

*3:民主党エドワード・マーキー上院委員は、気候変動対策のキーパーソンの一人。/By Senate Democrats - GreenNewDeal_Presser_020719 (7 of 85), CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=76516660

*4:数値は本書の表「Table 1 Runaway Inequality」より。

*5:世界の失業率(最新年度)。緑が3%未満、濃い青が3~4.9%、水色が5~9.9%、黄色が10~19.9%、オレンジが20~29.9%、赤が30%以上。/Fnweirkmnwperojvnu - CIA Fact Book Unemployment ratehttps://www.cia.gov/the-world-factbook/field/unemployment-rate/country-comparison, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=101257279による

*6:知恵蔵「ナショナルミニマム」の解説:「国民生活環境最低水準などとも呼ばれ、国家が国民に保障する最低限度の生活を営むために必要な基準。この概念を日本国憲法では第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の生存権として定めている。また、生活保護法などの法や社会保障制度の基礎となっている。」https://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%83%9E%E3%83%A0-588724

*7:価格支持:農産物などの価格が急落した場合、政府が最低買い付け価格で買い付けたり、保障する制度。

*8:ペイゴー原則:新規の支出や減税を行うときは、増税や歳出削減などで必要な財源確保を行うという原則。

*9:バーナンキのこの発言をピックアップした動画がYoutubeにある。/Bernanke: "To lend to a bank we simply use the computer to mark up the size of the account" https://www.youtube.com/watch?v=hiCs_YHlKSI

*10:より具体的なこのシミュレーションの条件:(1)ジョブ・ギャランティの時給は15ドル、(2)非人件費のコストは人件費より25%高い、(3)フルタイムかパートタイムを選択し、週平均32時間働くとする、(4)給与税を負担する、(5)所得の3分の1を連邦所得税として差し引く。(6)本プログラムの費用を相殺するための追加課税はしない。(”The Job Guarantee Budget”の箇所を参照)

*11:GDP比1.5%は、防衛費で言えば日本以上NATO諸国未満程度の規模である。東京新聞によると、21年度予算での日本の防衛費は対GDP比で0.95%(東京新聞の試算は1.24%)。額にすると毎年5兆円程度である。NATO各国は2020年推計値で、イタリアが1.39%、ドイツが1.56%、フランス2.04%、イギリス2.32%。/「日本の防衛費、GDP比で1.24%と判明…「隠す必要ない」と専門家 本紙がNATO基準で試算」東京新聞 2022年1月4日https://www.tokyo-np.co.jp/article/152199

*12:いわゆる「ブルシット・ジョブ」をイメージすると理解しやすい。

*13:ゼロ・エミッション:資源循環型の社会システムを構築することで、人間の出す廃棄物を実質ゼロにすること。

*14:ここまでの議論で明らかなように、living-wageは現状の最低賃金 minimum wageよりも上のものを指す。

*15: ITO憲章と完全雇用:1948年の国際貿易機構憲章(ITO憲章・ハバナ憲章)。これをもとにITO(世界貿易機構)を立ち上げる予定だったが、「ITOは、その内容があまりに理想的でありすぎたため、提案国であるアメリカを含めた諸国の批准が得られず…[中略]…関税と貿易面に関する条項は、ガット(GATT)に引き継がれて具体化された」(日本大百科全書(ニッポニカ)「国際貿易機構」の解説/ コトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E8%B2%BF%E6%98%93%E6%A9%9F%E6%A7%8B-1316839 )。なおITO憲章の該当箇所は次の通り。“The fundamental principle of Chapter II is that full and productive employment is not a matter solely of domestic concern to a country but affects the economic wellbeing of all other countries.” https://docs.wto.org/gattdocs/q/GG/SEC/53-41.PDF

*16:ステファニー・ケルトン 著, 土方奈美 訳『財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』 早川書房 2020年 182頁

*17:財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』 早川書房 2020年 182頁

*18:MMT 現代貨幣理論入門』414頁

*19:柏木亮二のDX Book Review「【COVID-19】UBIの財源論:『みんなにお金を配ったら』『普通の人々の戦い』ほか」野村総合研究所 https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2020/fis/kashiwagi/0513

*20:第6章、‘Situating the Job Guarantee within the Green Agenda’参照。

*21:例えば『図解入門ビジネス 最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』著者の望月慎は、「グリーン・ニューディールとジョブ・ギャランティの“距離感”」と題するコラムで、ジョブ・ギャランティグリーン・ニューディールとの「安易な混同」「単純な同一視」を戒めている(秀和システム 2020年 124頁)。

*22:明日香壽川『グリーン・ニューディール 世界を動かすガバニングアジェンダ岩波書店 2021年 Kindle版112頁

*23:同上、 Kindle版111頁(「第二波の特徴」)

*24:MMT 現代貨幣理論入門』引用部上段:430-431, 下段434-435頁

*25:財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生』 早川書房 2020年 318-319頁

*26:地域おこし協力隊:過疎化や高齢化の進む地方に住み込み、地方自治体から委嘱を受けて地域おこしになる仕事を行って、賃金を貰って働く制度である。こちらのサイトで募集中の仕事一覧をみることができる。/https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/list

*27:‘8. What types of jobs will the JG workers do?’ -Pavlina R. Tcherneva公式サイト http://pavlina-tcherneva.net/job-guarantee-faq/

*28:風力発電乱立に反対 住民らが団体設立 秋田」産経新聞 2020年9月2日https://www.sankei.com/article/20200902-DPHZEX6CE5LSNCHGLXOXLZVJB4/

*29:MMT 現代貨幣理論入門』423-頁